お商売によりそうSTORESのUXライティングモデル

お商売によりそうSTORESのUXライティングモデル

hey designers night vol.3「UXライティング会議 - デジタルプロダクトと言葉のデザイン」は、hey デザインチームが主催するデジタルプロダクトやブランディングなど、デザイン周辺の幅広いテーマについて取り扱うイベントで、2021年4月2日に開催されました。本レポートは前記イベント内の弊社松本 隆応のLT「お商売によりそうSTORESのUXライティングモデル」の一部内容を掲載します。

登壇者

ヘイ株式会社 ブランド本部 マネージャー 松本 隆応


本日は「お商売によりそうSTORESのUXライティングモデル」というテーマで、STORESのプロダクトにおいてどんな風にUXライティングに取り組んでいるのかという事ををお話しさせていただきます。

まず、heyが提供しているサービス「STORES プラットフォーム」とは、「お店のデジタル、まるっと」をコンセプトに、ネットショップを簡単に開設できたり、実店舗でお店のキャッシュレスを簡単に導入できたり、オンライン予約システムを簡単に導入できたりするサービス群の総称です。色んな事業をされている方々のデジタル化を支援するサービスを提供していくことを目指しています。

では、本題の「STORES プラットフォーム」においてUXライティングをどんな風に位置付けているのかというところです。UXライティングというと「フォームのマイクロコピー変えたらコンバージョンこのぐらい上がった」とか、「サインアップの会員登録するボタンをこういう文言にしたら効果が上がる」みたいな、割とこうマイクロコピー的な文脈で語られがちだとは思うんですけれども、「STORES プラットフォーム」においてはサービスとかブランド体験全体における、言葉のコミュニケーションを通じて、ユーザーさん、サービスを使っていただいてる方とより良い関係性を築くための方法、として捉えています。

さて、この「言葉のコミュニケーションを通じてより良い関係性を築くための方法」という考え方が、今日のトークテーマに繋がります。サービス体験であったりとか、ブランド体験みたいなところでいくと、その一部の人が言葉を使うわけではなく、チームとして全体として実践していくことが重要であると考えています。

では、チームとして実践していくためにどんな風に考え方や広げ方をしていけば良いのか。その具体的な思考のフレームを、「STORES プラットフォーム」のブランドデザインで考えてきたところがあるので、そこの部分を共有させていただければなと思います。

まず前提となる課題として、チームとして実践していく上でブランドに関わる言葉を扱う人はたくさんいて、その中でどんな風に一貫性を持たせていくかということがあるかと思います。ブランドパーソナリティであったりとかブランドボイス&トーン、実際表層レベルの表記ルールであったり、タイポグラフィなどたくさん要素があり密接に関連しあっています。そういった中での課題として、それぞれのレイヤーで意思決定する時に、結構各論で語られがちになっちゃうということです。

ブランド的にはこういうパーソナリティがあってこれを維持したいんだ、でも事業戦略とかマーケティング的には、効果が上がる言葉をどんどん出していきたい、みたいなところで、結構意思決定の軸がブレがちになってしまうんんですよね。でも本来的にはそこの色んなレイヤーの要素が、一つのラインに繋がっている必要があり、ブランドとしては一つの人格として認識されることが重要なので、ここをうまく接続するためにはどうすればいいのか、っていうところを考えて、整理してくことが重要だなと考えていました。

各論で語られがちな言葉をどう整理していくか。その視点としてUXに関わる意思決定を助けるUXの5段階モデルを応用することを考えました。これはジェシー・ジェームス・ギャレット氏が提唱したモデルで、WEBデザインにおいて、表層にあるボタンであったりとか、レイアウト、みたいなところは、本来的にはもう根底にあるWEBサイトの目的であったりとか、戦略みたいなものから導かれているということ。それぞれが相互に関係し合っていて、この5階層のモデルを元に色んなことが意思決定されるべきっていうところをまとめたモデルなんですよね。これがあることによって、ユーザーエクスペリエンスに関わるチームのメンバーが、同じ目的とか目標を共有して、正しい意思決定ができるようにする上で、とても役に立つモデルです。

これはもう10年ぐらい前に発表されたやつなんですけども、未だに使われていて、凄く耐久性の高いモデルなのかな、ていうところですね。

このUXの5段階モデルは、割とビジュアルの話、ユーザーインターフェース、GUIの部分の話がメインになってるので、これをそのままUXライティングに応用して、言葉の視点で置き換えた時に、どういう要素があって、どういう順番で組み立ていけばいいのかっていうところを整理してみました。

実際に作ったUXのライティングモデルの全体像がこちらですね。

元々のUXの5段階モデルにおいては戦略が最初に来るんですけれども、UXライティングは言葉のコミュニケーションを通じたサービス体験全体を通してユーザーとより良い関係性を築いていくものなので、まずブランドとか、事業戦略としてどうありたいかのビジョンが重要であると考えました。そのため、戦略の下のレイヤーにビジョンを追加し、そこの上で、戦略であったりとか、どういう要件が必要なのか、あとはどういう構造になるのか、それの上で、骨格であったりとか表層になるという整理にしました。

元のモデルをWEBサイトにおいて改めて説明しておくと、「戦略」の部分はサイトの目的であったりとか、「要件_の部分は実際の機能、「構造」の部分はユーザーフローみたいなところ、「骨格」はワイヤーフレーム、「表層」は実際のインターフェースのビジュアルデザインみたいなところです。

これを言葉のモデルUXライティングに置き換えていくと、まず「ビジョン」としてはSTORESブランドとして、「誰もがこだわりや情熱を突き詰める活動を続けられる世の中を作りたい_っていうところが根底のビジョンにあります。

そのビジョンを実現するために、実際にサービスを提供している方々とどういう関係性を築けば良いかといった「戦略」、つまりどんな存在や距離感あるべきなのかの人格を定義します。人格は「STORES プラットフォーム」における3つの事業特から導いています。まず、プロダクトを売って終わりではなく継続的に信頼関係を気づいていく必要があるということ。次に実際に事業を営まれている方々の成長と事業自体の成長が連動しているということ。そして、私たち自身はこだわりや情熱を持った事業という舞台を支えるサービスであるということ。そこから「主役となる人たちの活動を支えるパートナーとして認めてもらえる存在になる」と定めています。

「戦略」としての人格のイメージであったりとか、距離感のイメージがはっきりしていることによって、次の上のレイヤーに当たる「要件」としてどういう言葉を発するべきか、みたいな「」が自ずと導かれていくようになります。

パートナーとして認めてもらえる存在になるという目的を達成するためにはまず何よりも信頼が重要でであるということ。その上で実際に事業をされている方々と同じ目線で、情熱であったりとか、楽しさの気持ちを共有していこうと考えています。単純な事業ツール、無味乾燥な事業ツールじゃなくて、お商売することの楽しみをどんどん共有していきたい、というところを設定つまり「要件」として定めています。

ある程度人格であったりとか、信念みたいなところは出来上がってきたところで、次のレイヤーにあたる「構造」の部分では、「お商売っていう“舞台” に立つ人々の “瞬間” に寄り添う “演出” をしていく」っていうところを決めています。お商売という舞台の瞬間ってどういうものがあるだろうというシナリオや、そこにどんな人たちがいてどんな風に語りかけるのが良いかをを一通り洗い出し、マッピングした形で整理して言葉に「構造」を持たせることで幅広いシーンで一貫性が保たれるようにしています。。例えば、最初に商品が売れた時はやっぱりとても大切な瞬間なので、ブランドとしてもそこに寄りそいながら、「ハイタッチするようなテンションで成功を共に分かちあい体温が感じられような表現にする」と定め、その定義に即したDo&Don’t的なサンプルを用意したりしています。

そこからそのもっと上の「骨格」みたいなところは、実際の文章をどう組み立てるかというところですね。ここはこれまで組み立ててきたとしての人格やシーン基準に文章の原則を定めてそれらを基準に言葉を組み立てるようにしています。きます。、

そして、一番上のレイヤーにある「表層」の部分ですね。ある程度言葉の骨組みが出来上がってくるところで、それはどういう印象になるべきか、どんな風に肉付けしていくか。これは一番下の根底にある「ビジョン」の部分から脈々と繋がっていています。「誰もがこだわりを〜」という部分から、なぜこのフォントでなければいけないか、感情をどのくらい開かなければいけない、っていうのが自ずと決まってくるので、それらの基準をブランドのガイドラインと併せて定めておくことで、言葉とビジュアルデザインにおいても一貫性が保たれるようにしています。

このUXの5段階モデルを応用したUXライティングモデルの中で、一貫したコンセプトが繋がっていることで、色んなシーンにおいても意思決定をしやすくし、どんな人が、どんな時にライティングを行っても一気通貫したライティングを実現できるように目指しています。

最後にまとめると、普通は割と言葉の意思決定とか考え方とかって、目の前のところに囚われがちなんですけれども、ビジョンドリブンなモデルにすることによって、なんでコミュニケーションするんだっけ、なんでプロダクトを作ってサービスとして価値を提供してるんだっけ、っていうところを常に立ち返ることができます。それによって、ユーザーや実際にサービスを使っていただいてる方の成功を中心に据えたブレない言葉作りの意思決定に繋がる、っていうところです。今「STORES プラットフォーム」としてはここを起点に色々と言葉作り取り組んでいるところです。

本日お話しした事を、今実際に取り組もうとされている方であったりとか、実際に社内で色々推進されている方々に向けて、この5段階モデルをちょっと当てはめてみて、実際に活用していただけるといいかな、と思います。

ありがとうございました。